2013年6月19日水曜日

錦鯉登坂電車

田舎風景が続く。畑やポツポツ見える家々の合間を乾いた風と一緒に電車は抜けていく。
これも唐突にぽつんと登場した、簡素な駅に到着した。やたら古い。改札には誰もいない。私たちの他には人が見当たらない。そう、なぜかあの人と一緒だ。

観光調査をしなければならないようだ。その場で名物をPRするカタログなどを確認する。
駅の奥は乗り換えのホームになっており、登坂電車が出るようだ。来る途中には見えなかった。傍に深そうな川がある。グレーに濁っており、深さがわからない。
菖蒲のような草が生えている。草の根は川の中だ。草の間を赤白が動いている。錦鯉の小さいもののようだ。鯉がいる、と伝えようとすると、あの人は川に入っていた。腰まで浸かっており、危ないからと制するものの、にこにこしている。
電車が来る音がするので、急かして川から上がらせる。いつの間にかあの人が父になっている。あっという間にジーパンから白っぽいチノパンに着替えて、またあの人に戻っている。

電車は黒で、おしゃれな洋館みたいたに窓や屋根に白い縁取りがしてあり、趣があってかなり素敵だ。知らぬ間に集まっていたお婆さんやおじさんが乗り込んでいく。
乗らないと、と思っている間に電車は行ってしまった。早すぎないか、と思う。
しょうがないので次の電車を待つ。
手持無沙汰にカタログ類を物色する。錦鯉はどうやら名物みたいだ。

また、電車が来る。次は深い緋色だ。同じようにクリーム色の縁取りがしてある。
今度こそ、と思うが、またも乗り損ねた。
周囲の人もそこそこ年に見えるのだが、あの素早い電車にどうやって乗り込んでいるのであろうか。とても間に合わない。

また、次の電車が来た。今後は深緑色にベージュの縁取りの電車だ。
やっと乗り込むと、席がない。2人がけの個室ばかりで構成されているようだ。既に乗り込んでいたおばさんに嫌な顔をされる。座っているおばさんの膝と壁の隙間にようやく立っている形だ。
ひょっとして乗ってはいけなかったのでは、と思い至るが、電車は明るい黄緑の細い細い木々のトンネルを潜り抜けて坂を登って行く。

0 件のコメント:

コメントを投稿